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7月週刊ヤプリ_1週目海外事例から学ぶポストコロナのリテール戦略

 7月の週刊ヤプリは「ポストコロナのリテール戦略」をテーマにお送りします。第1回は株式会社ヤプリ エグゼクティブスペシャリスト 判大二郎をゲストとして、小売業界の最新の海外事例を紹介しました。

◇スピーカー紹介

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1 データから紐解く

 コロナウイルス流行後、外に出歩くことが減少し、小売業界は大打撃を受けました。新しい時代における小売業界の在り方が作られつつあります。まずは現状と今後の動きをデータから紐解いていきます。

・世界の現状

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            経済産業省 商業動態統計
 
 コロナが流行してからの小売指数を見ていくと、2021年に入ってからアメリカ・イギリスと売り上げを取り戻しつつあります。アメリカは急速なデジタル投資、イギリスは元来高かったEC普及率とヨーロッパ内の繋がりを元に、既にポストコロナの動きを始めています。

・コロナ収束後の消費者行動

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                       参照:YouGov‘s International Omni-Channel Retail Report 2021
 コロナ収束後のアンケートでは「食料品や服などはリアル店舗で買いたい」という意見が多く、特に生活必需品はリアル店舗での購入を望んでいるのが消費者の本音であるということが窺えます。

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                                  YouGov‘s The 'Pandemic Effect' on the American Shopper
 家で仕事ができる高所得者はリアル店舗での購入率が大きく減少しているのに対し、対面での仕事を行っている人々にとっては店頭での買い物に期待が高いことが分かります。

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        YouGov‘s The 'Pandemic Effect' on the American Shopper
また「コロナ後対面の購入をしたいか」というアンケートに対しても57%の消費者が店頭に戻りたいと感じており、コロナ後の消費者の動きは再び店頭で活発になることが示唆できます。

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        YouGov‘s The 'Pandemic Effect' on the American Shopper
 このデータからは、オンラインやスタンドアローンストア(大型商業施設ではなく、独立している小売店)での購入回数を増やすと考える人が多い反面、ショッピングセンター/モール/アウトレットなど複合施設における購入回数は減ると考える人が多いことが分かります。アメリカでは大型商業施設の人気は減少し、身近なお店がトレンドとなっています。

2 事例から学ぶ小売業

ここまではデータを通して各国の消費者の今後の動き/トレンドから、消費者が今後リアル店舗に戻る可能性を読み解いてきました。ここからは実際の海外事例を元に既に動き始めているポストコロナの売り方を紹介します。

・アメリカの購入行動の変化

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                   NRF2021 Verint reportを元に作成
 購入行動の検討→購入→受取の段階を見てみると、オンラインで購入した後に店頭やカーブサイドと呼ばれる車での受け取りを行うオンラインとオフラインの融合が行われていることが分かります。
 特に車での受け取りに力を入れている企業が多く、アメリカでは大きく流行している受取方法です。アメリカでは車通勤が多く、「店頭内にいる時間」は短くなったものの、「店頭に行く回数」というのはコロナ前後で変化していないことが分かります。

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 実際に顧客満足度が高い企業はどこなのかと見てみると、1位は「コストコ」です。「コストコ」の特徴はメンバーシップ制をとっている点です。一定金額を払ってサービスを受ける権利を買うというように、アメリカでは「サービスに対してお金を払う」という文化が根付いています。

・ブランドの果たす社会的役割

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                Source : IBM Consumer 2020 Research
 アメリカでは「パーパス志向」という考え方が重要な役割を占めるようになってきています。商品の質以上に企業が果たしている社会的役割が注目を集めています。今日のアメリカ社会では社会的役割を果たしていない企業の商品は購入されにくい傾向があります。
 イギリスの百貨店『SELFRIDGS』では、取扱い商品をサステイナブルなものに限定し、百貨店での展示の仕方をサステイナブルな社会に寄り添う見せ方にしています。今や百貨店はただ商品を置く場所では無くなっています。アプリやSNSを用いてそのようなサステイナブルな印象をアピールすることで、ブランドイメージが変化したと言われています。

・都心の店舗とローカルな店舗
 アメリカの小売業の流れとしてできているのが、都心の店舗以上にローカルな店舗に力を入れている点です。都心の大規模商業施設である、モールやアウトレットが低迷している中、地元の消費者が足を運びやすい環境を整えています。
 アメリカの『ノードスロームローカル』では都市部ではない地域のリアル店舗で、オンラインで注文した商品を受取、返品することが可能となっています。『ノードスロームラック』では低価格に振り切った商品を売る店舗を都市部ではないローカルな地域に作っています。最近の流れとしては贅沢品か低価格品かのどちらかが売れる傾向があるため、振り切った売り方をしている事例となります。
 「NIKE」では地域密着を志しており、地域のチームと連動して店舗の色合いを変化させたりと地域ごとの繋がりを重要視しています。

・メンバーシップ制

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『セフォラ』が取り入れているのは、メンバーシップ制のロイヤリティプログラムです。コミュニティー作りは他と差別化できる特筆した部分があります。同じ悩みを持った消費者同士が会話をするコミュニティーを提供することで、企業は消費者の悩みなどを把握し、次の商品に活かして消費者を囲い込むことが可能となっています。それに加えて、インフルエンサー向けのコンテストを行い、選ばれたインフルエンサーと相互的にメリットを提供し合う共同販促を行っています。企業は顧客と共に商品を開発、販売しています。

3 総括

 ポストコロナの消費者の動きで注目すべきポイントは、「店頭には戻ってくるが、目的が曖昧な来店が減少する」という点です。変化する消費者に合わせて店舗を作って行かなければなりません。そして具体例として「店舗での体験性、利便性」、「サービスに対してお金を払う仕組み」、「顧客との繋がりを強化するコミュニティー作り」を充実させた企業の事例をを紹介しました。
 日本と文化や背景は違うものの、コロナを受け体験性、利便性を追求する姿勢は日本の消費者にも当てはめることができ、参考になるリテール戦略の事例となるのではないでしょうか。

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